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築古アパートの耐震診断や補強工事、建て替えをすべきかどうかの基準を解説!
2022年04月08日
こんにちは。
大切な資産を守り、未来につなげる、建物修繕・メンテナンスのウィズライフがお届けします。
近年、日本では頻繁に地震が発生しています。
2000年から20年の間で、最大震度6弱以上の大きな地震が20以上も発生している地震大国です。
今後30年以内には、南海トラフ地震をはじめとする大地震が発生する確率がとても高いことも予想されています。
日本では、どこの地域でも大きな地震が発生する可能性が十分にあります。
震災が原因で居住者が亡くなってしまい、損害賠償問題に発展した古いアパートもあります。
瑕疵(欠陥)によってアパートが簡単に倒壊したとされ、所有者であるオーナーが責任を問われることになりました。
築年数の古いアパートを所有しているオーナーにとっては、他人ごとではありません。
しかし、建て替えや耐震補強、耐震診断を受けるタイミングなど、次の地震は予測することができないため、悩んだり決断に踏み切れなかったりすると思います。
そんな耐震診断や耐震工事などについて、さまざまな観点から解説をしていきたいと思います。
ぜひチェックしてみてください。
目次
●まずは自己診断!アパートの耐震性がわかる3つの項目とは
〇建築年が1981年以前かどうか(新・旧耐震基準)
〇建物の構造から法定耐用年数を確認する
〇建物の形状・建材から把握する
●アパートの耐震診断の義務と被災時の責任範囲
〇修繕義務の範囲
〇瑕疵(欠陥)が見つかると賠償責任もあり得る
●アパートの耐震診断の注意点
〇耐震診断会社の探し方とポイント
〇事前に用意しておくもの
〇診断とはどんなことをするのか
●耐震工事と建て替え、どちらが良いのか
〇耐震工事のメリットとデメリット
〇建て替えるメリット・デメリット
まずは自己診断!アパートの耐震性がわかる3つの項目とは
まずは、ご自身でできる確認項目をご紹介いたします。
耐震診断を受けるべきかの参考にできるため、気になる方は今すぐ確認することをおすすめします。
確認項目は、3つあります。
1. 建築確認の日付(新・旧耐震基準)
2. 建物の構造(法定耐用年数)
3. 見た目でわかる部分(建物の形状・建材)
それぞれを具体的に説明していきます。
建築年が1981年以前かどうか(新・旧耐震基準)
所有しているアパートの、建築確認の日付を確認しましょう。
1981年6月1日以後であれば、新耐震基準をクリアしているため、安心してください。
1981年5月31日以前であれば、旧耐震基準なので、必要に応じて耐震診断を受けた方がよいと判断できます。
耐震基準とは、建物を建てる際に、自信に耐えられる設計・施工を義務付ける法的規準のことで、建築基準法によって定められているものです。
昔から地震大国である日本は、1900年代から建築のルールが少しずつ制定されて、時代とともに耐震設計や耐震性能について研究が進み、建築に関する法律の制定や改正がおこなわれてきました。
新耐震基準は、1981年6月1日に建築基準法の改正によって定められて、震度6~7程度の地震では損傷しないことが基準になっています。
建物の構造から法定耐用年数を確認する
「法定耐用年数」が過ぎているかどうかも、耐震性の1つの目安になります。
法定耐用年数とは、国税庁が定めた税制上の耐用年数のことであり、建物の構造によって年数が異なります。
・木造→耐用年数22年
・鉄骨造(骨格材の厚み3mm以下)→19年
・鉄骨造(骨格材の厚み3~4mm以下)→27年
・鉄骨造(骨格材の厚み4mm以上)→34年
・鉄筋コンクリート造→47年
上記のように木造→鉄骨造→鉄筋コンクリートと構造が頑丈になるにつれて、法定耐用年数は長くなります。
ただし、上記の年数は、建物の使用期間ではないので注意しましょう。
あくまで減価償却上の耐用年数ということを覚えておきましょう。
耐震性の海を確認できる指標とは言い切れませんので、目安として捉えるようにしてください。
建物の形状・建材から把握する
これまで紹介した新耐震基準で建てられている、法定耐用年数内だからといって、耐震性に優れているとは限りません。
同じ耐震基準の建物でも、あっても建物の形状・建材によって耐震性が異なります。
チェックすべきポイントは、形状、柱、壁の多さ、目で確認できる老朽化です。
・形状が正方形、長方形かどうか
正方形・長方形の建物は、そうでない形状よりも耐震性が優れているとされています。
コの字型やL字型など凹凸がある形状は、地震のときに、接合部分に負担がかかりやすいため、損壊の危険性が正方形や長方形よりも高くなります。
・柱や壁が多いかどうか
柱と壁が多い構造は、耐震性が良いとされているため、所有しているアパートの柱・壁の数をチェックしてみてください。
柱が少ない建物は、例えば1階がガレージや倉庫など空洞が多い建物です。
1階が空洞であると、柱が少ないため、建物をさせる力が他の部位と比べると弱くなるとされています。
壁の数も同様で、目安として「ラーメン構造」か「壁式構造」で確認することができます。
「ラーメン構造」とは、柱と梁を組み合わせて室内に極力壁がない空間をつくる工法です。
「壁式構造」は、壁と床を組み合わせて建築します。
壁と床でつくる「壁式構造」のほうが、耐震性が高いとされています。
・老朽化しているかどうか
当然ですが、建物が老朽化していると、耐震性は下がります。
目で確認できる老朽化として代表的なものを紹介します。
1. 外壁にヒビが入っている
2. 扉の開閉がしにくい
3. 床がたわんでいる
これらが確認できるのなら、老朽化の黄色信号だと考えてください。
アパートの耐震診断の義務と被災時の責任範囲
一部の条件を除いて耐震診断は、義務ではありません。
しかし、被災した際に、建物が破損し入居者・近隣者に危害が及んだ場合、大家さんに責任が生じる可能性があります。
ちなみに一部の条件とは、以下の2つを満たしている場合になります。
・1981年5月31日以前に着工したもの
・3階建て以上かつ1000平米以上の賃貸住宅
いずれにしても、被災した内容によっては、オーナーに修繕義務・賠償責任が生じることも少なくありません。
修繕義務の範囲
被災して建物が一部損壊すると、オーナーに修繕責任が生じる場合があります。
なぜなら、オーナーが建物の所有者であり、利益を得る立場だからです。
借主である入居者の立場では、手に負えない部分が多くあります。
電球の交換など簡単な修繕とは違い、鍵が点灯してフローリングが傷ついた、屋根材が剥がれた、柱が傾いたなど入居者では、手の施せない部分は多くあるため、オーナーに修繕義務が発生するのです。
瑕疵(欠陥)が見つかると賠償責任もあり得る
建物の倒壊により、入居者や近隣住民がケガをしたり無くなってしまうケースが、一番恐ろしいです。
しかも、もともと耐震性に不備(欠陥)が残る工法が原因で倒壊した場合、所有者として賠償責任を負う可能性が高いです。
この賠償責任は、民法第717条「土地の工作物等の占有者及び所有者責任」に基づいています。
アパートの耐震診断の注意点
耐震診断を受けることで、「現行の耐震性を満たすために、何が足りないか」を知ることができます。
しかし、無防備に耐震診断を打診するのはおすすめしません。
正確な診断を受けるためにも、オーナーも事前準備や情報収集をするべきです。
耐震診断会社の探し方とポイント
耐震診断会社を一から探す場合、目安が3つあります。
1. 自治体に事業者登録している会社
2. 耐震診断、耐震改修技術者としての資格を持っている会社
3. 耐震診断の実績が豊富な会社
これら3つを満たす会社をおすすめします。
なぜなら、耐震診断の世界にも詐欺が多く蔓延っているからです。
とくに訪問してきた会社の言葉のすべてを鵜呑みにするのは危険です。
不安を煽られるかもしれませんが、冷静になり3つの条件を満たしているかを調べましょう。
事前に用意しておくもの
耐震診断にあたり、「設計図書」「検査済み証」の2つの書類を用意しておきましょう。
これら2種類の書類があることで、精度の高い診断が可能になります。
手元に無い場合は、所管の自治体や建築したハウスメーカーに問い合わせてみましょう。
診断とはどんなことをするのか
耐震診断には、大きく3段階あります。
1. 予備調査(書類調査)
2. 現地調査(1次から3時などに分かれる)
3. 耐震診断数値計算
はじめに建物の設計図書を診断会社に提出し、書類だけの予備調査を実施します。
そこで耐震性レベルが判断されます。
レベルに応じて必要箇所の調査をおこない、このときに概算見積もりが提出されます。
予備調査の次は、現地調査です。
実際に現地に赴き、書類だけでは判断できない現況を調査します。
現地調査での調査内容は、4つあります。
1. 目視による劣化調査(外観、コンクリートなど)
2. 図面との照らし合わせ(柱・梁・壁などの断面寸法)
3. 敷地内と周辺状況(地盤種別、崖、敷地の傾斜など)
4. はつり調査(構造図面がない場合、各部材の本数やサイズを調査)
どの箇所をどれくらい詳しく調査するかは、建物の診断レベルによって異なります。
最終的には、耐震性の有無に必要な計算がされて、総合的な評価および必要に応じた耐震工事を提案してくれます。
耐震工事と建て替え、どちらが良いのか
所有している物件の耐震性の問題が見られた場合、耐震工事の受けるかどうかの判断をしなければなりません。
あらゆる事情が複雑に絡み合い、悩ましいところだと思います。
耐震工事をするか建て替えにするのかは、どちらも高額なため、そう簡単に判断を下せないでしょう。
判断をする際の参考になると思いますので、それぞれのメリットとデメリットを紹介していきます。
耐震工事のメリットとデメリット
耐震性を高めるために、耐震工事を第一候補と考える方が多いと思いますが、耐震工事が正解かどうかはしっかりと検討する必要があります。
耐震工事は、決して安いものではありません。
さらに、今後発生するかもしれない大地震による被害を完璧に抑えることができるとは言い切れないことも考慮すべき点です。
メリットとデメリットをそれぞれ考慮しつつ、所有されているアパートに耐震補強工事をすべきかどうか判断するようにしましょう。
【耐震工事のメリット】
・補助金と優遇税制を利用できる
・国が定める耐震基準を満たすことができる
・耐震性が高まり、被災による人命のリスクを抑えられる
・耐震性が高まるため、入居率が上がる可能性がある
・将来的にアパートを売却したいのなら、今よりも高い値段になる可能性がある
【耐震工事のデメリット】
・震災による損害を完全に抑えることはできない
・改修費が高額
・家賃収入が急激に増えるわけではない
・改修規模によっては入居者に立ち退きを依頼しなければならない場合もある
・将来的に建て替える場合、費用回収が終わらず耐震工事費用の出費が無駄になることも
これらのメリットとデメリットのバランスを考えてから判断することをおすすめします。
建て替えるメリット・デメリット
アパート経営は、20年以上の長期戦です。
耐震性を高めて継続的に安定収入を得ることを考えるのなら、建て替えるという選択肢もあります。
ここからは建て替えるメリットとデメリットを紹介していきます。
【建て替えるメリット】
・はじめから新耐震基準で建築できる
・基準よりも高い耐震性の高い設計が可能
・家賃が上がり安定収入を得られる
・修繕費の増加を抑えられる
【建て替えるデメリット】
・耐震工事よりも費用がかかる
・入居者がいる場合は立ち退き費用が必要になる
建て替えを検討する際は、建て替えプランを複数の建築会社などから提案してもらうことで、正しい判断かどうかが明確になるのでおすすめです。
まとめ
とにかく地震が多い日本に住んでいることを認識し、アパートを所有しているオーナーは、耐震性をしっかりと把握しておきましょう。
瑕疵(欠陥)がある場合に、それが原因で倒壊したのならオーナーに損害賠償が発生する可能性が高いです。
しっかりと基準をクリアしているかどうか確認して、状況に合わせて耐震工事か思い切って建て替えをして入居者の安全を確保するようにしましょう。
このコラムがお役に立てば幸いです。
以上、建物修繕・メンテナンスのウィズライフ株式会社でした。
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