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賃貸オーナーが知っておくべき原状回復のガイドラインと費用負担の決まりごと

2021年08月20日

こんにちは。
大切な資産を守り、未来につなげる、建物修繕・メンテナンスのウィズライフがお届けします。

賃貸物件で入居者が退去したあとに床や壁紙などの内装、給湯器などの備えられている設備を入居時の状態に戻すために補修をする「原状回復」。

賃貸オーナーにとって、原状回復はリスクのひとつであるため気になるところです。
なぜなら、原状回復をしなければならない箇所が多く大規模だと、費用がかさむからです。

だからといって、原状回復を怠ると、内装や設備が傷んで物件の価値が下がります。
さらに、原状回復は、オーナーと入居者との間でどちらがどれくらい費用を負担すべきなのかというトラブルになることが多いです。

そのため、原状回復についてしっかりと把握して、トラブルを避けて業者選びも賢くおこないコストを抑えることは、賃貸経営を安定しておこなうために欠かせません。

そこで今回は、「国交省が定める原状回復のトラブルとガイドライン」「2020年4月に改正された民法」に基づいて、原状回復の費用負担のルールなどについて説明していきたいと思います。

原状回復にかかる期間や業者の選び方なども紹介していきますので、参考になると思います。

原状回復についてしっかりと知りたい、不安や悩みがあるというオーナーのみなさまは、ぜひ最後まで読んでみてください。

【目次】
●賃貸住宅の原状回復のガイドラインとは
●原状回復費用の負担の割合は、経過年数・入居年数によって変わる
●原状回復のトラブルを防止するための入退去時確認リスト
●原状回復にかかる期間はどれくらい?
●原状回復を依頼する業者をどう選ぶべきか
●まとめ

賃貸住宅の原状回復のガイドラインとは

少し先述しましたが、賃貸住宅の原状回復は、オーナーと入居者との間で、補修費用をどちらがどれくらい負担するかをめぐってトラブルになりやすい問題です。

そのため、国土交通省により1998年に「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が定められることになりました。(最新の改定は2011年)

ガイドラインの内容は、主にオーナーと入居者との間の

●原状回復の費用負担ルール
●原状回復のトラブルを未然に防ぐ確認リスト

など、原状回復の基本的な考え方から、実務に役立つ判断基準・ツールまで幅広く定められています。

そんなガイドラインの内容について紹介します。

原状回復の費用負担のルールとは

「賃借人の居住、使用による発生した建物価値の現象のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という)を復旧すること」
とガイドラインでは原状回復の定義をこのようにしています。

入居者が物件を退去するときは、物件を入居時の状態に戻す義務があります。
これを原状回復義務といいます。

ですが、建物は経年劣化していくものです。
ガイドラインでは、過去の判例などから日常生活をしている中で生じる汚れや傷の補修費用は、入居者が賃料によって支払っているものとすると定められています。

とすると、普通に生活することで生じた汚れや傷は、入居者が退去時に原状回復費用として負担する必要がないということになります。

では、どのようなケースに、入居者が原状回復費用を負担するのでしょうか、
それは…

●故意や過失
●不注意
●普通の生活を超えるレベル

によって生まれた汚れや傷です。

ここで注意すべきなのが、入居者が原状回復費用を負担する必要があるのは「故意・過失・不注意などによる汚れや傷のみ」であることです。

わかりやすく例で説明しますと…

1. 入居者が喫煙者でたばこのヤニで汚れた壁紙の補修→入居者負担
2. 入居者が普通の生活をする中で経年劣化した壁紙の補修→オーナー負担
3. 入居時よりも良い壁紙に張り替えた→オーナー負担

となります。

改正民法で定められた原状回復と敷金のルールとは

2020年4月、明治以来約120年ぶりに民法が改正され、そこでも「原状回復ルール」が明文化されました。

「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない」
(改正民法 第621条)

と原状回復のルールを民法で定めています。

入居者が物件を損傷させてしまった場合、退去時に損傷箇所を入居時の状態に戻さなければなりません。(原状回復義務)

しかし、普通の生活による損耗・経年劣化などは、入居者が原状回復する必要はないという主旨です。

国交省のガイドラインとほぼ同じ内容になります。

ガイドラインが過去の判例などに基づいて示していた原状回復義務の考え方を、民法が法律によって明文化したものというわけです。

さらに民法では、敷金のあり方も定められています。
内容は…

「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう」
(改正民法 第622条の2)

「敷金」は今まで定義がなかったのですが、家賃滞納に備えて受け取るお金であると法律で明文化されました。

これにより「敷金は原状回復費用に使用したので、返金できない」というオーナー側の言い分が通らなくなります。

そして、滞納された家賃に充てた結果、敷金が残った場合は、賃貸契約が終了して退去する際に、入居者に返さなければならないことも明文化されました。

「特約」がある場合、入居者にも原状回復費用を負担してもらえる

ガイドラインや改正民法によると、原状回復費用はオーナーの負担のほうが大きいです。
入居者がよっぽど何かを壊したり汚したりした場合は、原状回復費用を請求することができますが、入居者がとてもキレイに部屋を使っていたとしても、退去後は

「ハウスクリーニング」
「水まわり設備の消毒」

のような最低限の原状回復費用はかかってしまうものです。
なぜなら、これらの費用は通常の使用による損耗の範囲なので、オーナー負担となります。

しかし、ガイドラインと原状回復についての改正民法の規定はどちらも任意規定のため、内容の異なる「特約」も有効となります。

そこでハウスクリーニングなど、通常損耗による原状回復費用の一部を入居者に負担してもらえるのが「通常損耗補修特約」というものです。

賃貸契約を結ぶときに特約を「賃貸契約書に記載」または「口頭での説明」で入居者の合意を得ることができれば、特約に記した通常消耗による原状回復費用は、入居者に負担してもらうことができます。

「通常損耗補修特約」の注意点として、入居者に負担してもらう原状回復の種類・金額を具体的に明記するようにしましょう。

具体的に記さずにざっくりした記載の場合、もしもトラブルに発展した際に、特約の有効性が認められない可能性があります。

オーナーにとって、原状回復費用は入居者が退去するたびに発生する費用です。
原状回復費用を少しでも抑えたいと考えるのならば、「通常消耗補修特約」を賃貸契約書にはっきりと記載して、入居者の合意を確実に得ておきましょう。

原状回復費用の負担の割合は、経過年数・入居年数によって変わる

オーナーと入居者との間で、原状回復費用の負担の割合は、「物件や設備の経過年数「入居年数」によって変わります。

物件や設備が古ければ古いほど壊れやすいということで、入居者の負担は少なくなります。

新築時に、耐用年数6年の壁紙を貼っているとして…

●入居してすぐに張り替えが必要になった場合は、入居者が100%負担。
●入居後3年で張り替えが必要になった場合は、オーナーと入居者で50%ずつ負担。
●入居後6年以降で張り替える場合は、耐用年数に達しているということで、オーナーが100%負担。

というように状況によって負担する割合が変わっていきます。

原状回復のトラブルを防止するための入退去時確認リスト

原状回復費用の負担の割合を判断するために、把握しておかなければならないことがあります。
それは、「入退去時の内装や設備がどのような状態であったか」です。

そのために、原状回復のガイドラインでは、入退去時の内装・設備の状態を確認するためのリストというものが公表されています。

入居者・オーナーの相互に、入居時には、損耗の有無、交換年月、退去時には、損耗の有無、修繕・交換の要否を確認しあうことで、納得のできる費用の負担の割合を導き出すことができます。

原状回復にかかる期間はどれくらい?

賃貸住宅の原状回復にかかる期間は、ハウスクリーニングや壁紙の張り替え、畳の表替えなどのような簡単な作業であれば2~3日で完了することもあります。

フローリングのすべてを張り替えたり、壁の下地の交換をしたりといった大掛かりな工事になると1~2週間くらいかかる可能性があります。

業者選び、見積もり依頼、作業工程の確認など、工事以外の時間もふまえると、次の入居者が住めるようになるまで、2週間~1ヵ月くらいが必要になるかもしれません。

春先の引っ越しシーズンですと、繁忙期のため業者のスケジュールをなかなか抑えらないおそれもあることを覚えておきましょう。

原状回復を依頼する業者をどう選ぶべきか

原状回復を業者に依頼する際、どのような点に注意して選べばいいのでしょうか。
選ぶ方法は2つあります。

●賃貸管理会社に紹介してもらう
●オーナー自ら探す

原状回復を無難に済ませたいのなら、賃貸管理会社の紹介業者を利用するのがおすすめです。
なぜなら、業者を探す手間が省ける、業者の信頼度が高い、見積もりや工事の立ち合いなどを賃貸管理会社が代わりにやってくれるというメリットがあるからです。

デメリットとしては、紹介手数料が発生することです。

オーナー自らが業者を探す場合は、対応の早さ、適正価格か、見積もりが具体的か、知識や実績が豊富か、という点に注意して探すようにしてください。

探しているうちに迷ってしまった場合は、原状回復専門業者もあるので、そちらに依頼する方法もひとつの手段です。

まとめ

原状回復費用を入居者にも負担してもらえるのは、「入居者の故意、過失、不注意によって損傷が発生した場合」です。

「普通の生活による損耗」「経年劣化による損耗」は基本的にオーナー負担になります。
しかし、「通常損耗補修特約」によって、入居者への負担を求める内容を具体的に、契約書または口頭で説明した際に合意を得ているのならば、入居者にも原状回復費用を請求できます。

そして、入居者に原状回復費用の負担を求める際に、物件や設備の状態を考慮しなければならないことを覚えておきましょう。

物件の状態によって負担の割合が左右されます。
そして、原状回復を業者に依頼するときは、賃貸管理会社に任せることが無難に進めることができるひとつの方法なので、利用してみてはいかがでしょうか。

このコラムがお役に立てば幸いです。
以上、建物修繕・メンテナンスのウィズライフ株式会社でした。

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