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大家さんが知っておくべきこと!賃貸物件のエアコン修理義務は誰にある!?

2022年04月22日

こんにちは。
大切な資産を守り、未来につなげる、建物修繕・メンテナンスのウィズライフがお届けします。

賃貸アパートや賃貸マンションなどあなたが所有している物件には、はじめからエアコンが設置されている物件があると思います。

では、このエアコンが故障した場合、修理や交換をするのは一体誰になるのでしょうか?

この記事では、大家さん(賃貸人)と入居者(賃借人)のどちらが修理代を負担するのか?などについて詳しく説明していきたいと思います。

きっと役に立つことが見つかると思いますので、最後までお付き合いください。

【目次】
●大家さん(賃貸人)の法律上の修繕義務
●要件1.「賃貸物」の修繕であること
 ┗○賃借人が設置したエアコン
 ┗○賃貸人が設置したエアコン
 ┗○残置物のエアコン
●要件2.使用及び収益に必要な修繕であること
●要件3.修繕が「賃借人の責に帰すべき事由」で生じた場合ではない
●賃借人が自費で修理や交換をしてもいいのか?
 ┗○修理の場合
 ┗○交換の場合
●まとめ

大家さん(賃貸人)の法律上の修繕義務

賃貸借契約における修繕義務は、民法により以下のように定められています。

民法第606条1項
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責に帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りではない。

この条文によると、賃貸人が修繕義務を負う条件は次の3つです。

① 賃貸物の修繕であること
② 使用及び収益に必要な修繕であること
③ その修繕が賃借人の責に帰すべき事由によって生じた場合ではないこと

次からは、これら3つの要件に沿って説明していきたいと思います。

要件1.「賃貸物」の修繕であること

賃貸借契約は、賃主が、賃貸の目的物を借主に使用収益させる義務を負い、借主が対価として賃料を支払う義務を負うという契約です。

賃貸人は、家賃を受け取る代わりに目的物を賃借人に使用収益させる義務があるので、目的物に不備があり、使用収益に支障がでるのなら、賃貸人が修繕する義務を負担するのは当然ということになります。

その一方で、エアコンが賃貸借契約の目的物でなければ、その故障に対して、賃貸人が修繕する義務を負わなければいけないことはありません。

そして、そのエアコンが当該賃貸借契約の目的物かそうではないのか、個別の賃貸借契約の中身次第になります。

賃貸借契約書や重要事項説明書に物件の設備としてエアコンが明記されているのなら、当該賃貸借契約の目的物ということになります。

しかし、このように明確に記載されていない場合が問題です。

賃借人が設置したエアコン

賃借人が入居後に、自らの費用で購入・設置したエアコンならば、一般的には賃貸借契約の目的物となりません。

そのため、それが故障しても、賃貸人は修繕義務を負うことはありません。

賃貸人が設置したエアコン

賃貸人が購入して建物に設置していたエアコンであれば、通常、賃貸借の目的物となっているでしょう。

そのため、それが故障すれば賃貸人が修繕義務を負うことになります。

残置物のエアコン

まず残置物とは、「以前の入居者が設置して、そのまま残してある物」のことです。

まず前の入居者が退去する際に、エアコンを撤去するので所有権を賃貸人に譲ったという場合、賃貸人が設置したエアコンと同様に賃貸借の目的物となっていることが通常なので、賃貸人が修繕義務を負うことになります。

単に入居者がエアコンをそのままで退去してしまったとしても、ほとんどの場合は、エアコンの所有権を無償譲渡したと解釈できるため同じく賃貸人が修繕義務を負います。

もっとも、残置物の所有権が賃貸人になるのかどうかは、それが賃貸借契約の目的物となっているかを判断する材料のひとつに過ぎず、賃貸人に所有権がなければ賃貸借契約の目的物にならないという訳ではないのです。

なぜなら、仮に残置物の所有権が退去済の入居者にあったとしても、他人の所有物を貸すことも契約としては有効です。(民法561条、559条)

したがって、そもそも賃貸借契約書にエアコン設備付きの物件であることが明記されている場合は、それが残置物かどうかに関わらず、それを使用させなければならず、賃貸物にあたるため、賃貸人が修繕義務を負うことになります。

このような記載がない場合であっても、賃貸借契約締結までの過程で、例えば内見をした際に、エアコン付きの物件として説明を受けたという事実や、借主募集の広告にエアコン付きと表示されているのであれば、エアコンを賃貸物とする合意があったと認められる場合があります。

反対に、たとえば、前の入居者から賃貸人に譲渡されて所有権が賃貸人にあるエアコンだとしても、新入居者との契約時に「前の入居者が置いていったエアコンなので、使用していただいても構いませんが、故障したときは自分で修理してください」と説明しており、新入居者がこれに同意したのならば、賃貸借契約の目的物に該当しません。

あるいは、目的物となっていたとしても、賃貸人が修繕義務を負担しない特約を結んでいたと解釈することも可能です。

要件2.使用及び収益に必要な修繕であること

次に、エアコンが賃貸物であるのならば、それが故障により冷暖房の機能が失われてしまった場合、修理することで使用及び収益につながることは明白です。

ここで問題になるのは、「冷暖房は機能しているけど、変なニオイがする」のような場合です。

冷暖房という基本の機能が失われていないのならば、使用収益に支障がないと判断できそうですが、「ニオイがとにかく酷くて、使用できない」という場合は、実質的に使用できないという判断もできるので、これは「程度の問題」としかいえません。

理屈としては、「臭くて使えない」場合は修繕を請求できるのですが、「臭くて使えない」状態かどうかは主観的な部分が大きく、これを立証するのも難しいため、この評価をめぐる法的な争いはおすすめできません。

賃貸人と賃借人の両者でニオイを確認するほかないと思います。

要件3.修繕が「賃借人の責に帰すべき事由」で生じた場合ではない

賃貸人は、「賃借人の責に帰すべき事由」によって生じた修繕義務を負わない、という文言は、民法改正のタイミングで追加されたものです。(民法第606条1項)

逆にいうと、エアコンの故障が賃貸人に原因があるのなら、賃貸人の入居者の双方に責任がない場合であっても、賃貸人は修繕義務を負います。

なぜなら、賃貸人は家賃を受け取る代わりに、積極的に賃貸物を使用収益させる義務を負っているため、家賃をもらう異常はその義務を果たさなければならないからです。

賃貸人が損害をかぶることになるのですが、これは仕方のないことです。
第三者に責任があるケースでは、賃貸人は、第三者に不法行為責任などに基づき第三者に損害賠償として請求することで損害を補填することになります。

ところで、入居者は賃貸借契約が終わると、賃貸物を返さなければならず、契約中は賃貸物を使うにあたって、善管注意義務というものを負っており、入居者の責めに帰すべき事由でエアコンが故障した場合は、そもそも契約違反であり、賃貸人は入居者に損害賠償請求ができます。

日本が貧しかった時代は、資産家である賃貸人とそうでない賃借人の貧富の差が大きかったため、賃借人に修繕義務を負わせても修繕ができず現実的ではないため、まずは資産家である賃貸人に修理させるという形でした。

近年では、入居者が原因で故障したものは入居者に修繕させれば済むことであり、公平だというのが通説となっていました。

そこで、民法改正で「入居者の責めに帰すべき事由がある場合は、賃貸人の修繕義務を負わない」と定められました。

賃借人が自費で修理や交換をしてもいいのか?

賃貸目的物となっているエアコンが故障した場合、賃借人が自費で交換や修理をしてしまっても問題がないのでしょうか。

修理の場合

エアコンが賃貸目的物であっても、賃借人の所有物ではないので、他人の物を勝手に修理してはいけません。

しかし、賃貸人が修理の必要性を知っているのに修理してくれない場合、すぐに修理しないと使用収益ができない場合に限り、賃借人が修理することを認めています。

この場合に発生した修理代金は、賃貸人に請求できます。

交換の場合

次は、修理しても直らない場合に、賃借人が新品に交換することは可能なのでしょうか。

この場合も、修理の場合を同じく義務は賃貸人にあります。
賃借人の交換が認められる場合も、修理のときと同じです。

これらの要件を充たす場合には、壊れたエアコンを賃借人が交換することは可能です。
この費用も賃貸人に請求できます。

ただし、取り外した壊れたエアコンは賃借人の所有物ではないので、処分する権限はありません。
ゆえに、しっかりと管理しておくようにしましょう。

まとめ

基本的に賃貸借契約は、数年間続くものです。
そのため、賃貸人と賃借人の間でトラブルが発生すると、雰囲気が悪くなってしまいます。

今回は、エアコンを例にして説明させていただきましたが、トラブルを回避するために、契約書に隈なく明記することが大切です。

このコラムがお役に立てば幸いです。
以上、建物修繕・メンテナンスのウィズライフ株式会社でした。

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